出版業界といっても出版社から小売書店まで、それぞれの業界で抱える問題は異なるから一括りでは表せませんね。
出版界でも、出版しているジャンルによって問題・課題は違っています。例えば雑誌やコミックに特化しているところは電子媒体に替わられたり、海賊版に侵食されて大変です。雑誌、コミックが「売れない」となると一番問題なのが取次で、毎週・毎月発行される雑誌を中心に貨物輸送が成立していたのが、部数減で配送頻度が落ちると配送に便乗していた書籍関係の輸送コストが問題となります。うまく配送するために今まで以上にかかるお金を誰がどう負担するか、といった問題があります。また、消費税対応、デジタル化の進行に伴う版権問題への対応など、問題山積みです。
しかし、「売れない」とばかりも言っていてもしょうがない。売れる本も沢山あって、売れる本屋さんはそれなりに売れている。ただ売れる期間がどんどん短くなっているし、ハウツーものが多いので賞味期限も短くなっている。部数はそれほど伸びないので、点数を沢山出して稼がないといけないが、返品となって戻る在庫が大きな問題であり、出版界自身も当然それに気付いています。
この影響を受けているのが印刷・製本関係。印刷業界では繁閑差が大きくなると出版だけに頼っていられず商業印刷へ行く、あるいは製版会社はデジタル化やグラフィック化に動く。さらに、一番問題なのが製本関係で、紙の出版部数減の影響大であり、特に並製本の会社は雑誌関係がなくなっていくので厳しい……。
このように業界が変動している時ですから、当組合だけが順風ということはあり得ないのですが、やはり業界に特化した組合として、紙媒体中心の業界をお客様としてやっていくのは今のところ変わりません。私が当組合内でよく言っているのは、どの業種業界でも、本当の(一番末端にいる)お客様は誰なのかをもっと考えようということです。例えば、金融機関の本部職員でも、ウチに預金・借入をされている方々を常に意識して行動することが大切です。
出版社も、取次の顔色をうかがうと同じように、末端のお客様(読者)の顔色をちゃんとうかがって「どうマーケティングして、どうつくっていくか」でしょう。書店も同じで、取次に「これしか来ない」と言う前に、自分で分析して「この地区だったら、こういう商売をしたいからこの本を欲しい」と動く。製本界も同様で、版元・出版社の社長さん、あるいは出版社の編集・営業さんなど第一線の人達といかに交わり、読者が求めているものを、もっと身近に知って製本することが必要なのではないでしょうか。
いずれにしろ、どれも簡単にできることではない、しかし、関係する各業界で危機感を同じように持って、やって行けたら、少しずつ強くなるのではないでしょうか。もちろん、製本業は、基本的に受注産業なので競争もあり、受注するため金額のたたき合いが起きたりしています。しかし、「安売りに負けない、陥らないためにはどうしよう」と常に考えていかないと、結局、安売りするしかないということになってしまいます。