--新聞記者をご経験の後、政治の世界に入られたとお聞きしていますが。
大学卒業後約15年間、朝日新聞の記者をつとめ、その後政治の世界に入りました。その意味では、まさに紙の世界の住人です。子供の頃の夢は小説家で、典型的な文学少女でした。今も、文字を読むのは、紙でないと納得しない。
もちろんパソコンは使っています。しかし、読んだり考えたりするのは紙。メールをもらっても、必ず「印刷してね」と秘書に頼みます。"印刷してはじめて頭に入る人間"なのです。
例えば新聞の切り抜きも、とても重要です。よく新聞記事の要約を役所がまとめて持ってきますが、やはり、新聞自体の雰囲気が伝わらない。
切り抜きというのは、まさに切り抜きでないとダメで、要約データは却下です。新聞記者でしたから、同じ発表原稿でも、各紙で書き方や見出しが違うし、掲載面の方針も違う、その感じが伝わってこないと理解不十分なのです。
一般の本を読むときも同様です。夜、本を読んでからでないと寝る気になれない人間で、実はこの取材で思い出の本の話が出るかもしれないので、浅田次郎さんの『終わらざる夏』上下を昨夜から読み返し、その結果、今日は睡眠不足です(笑)。
そんなわけで、私自身、電子書籍とか電子媒体とか言われても、それは本とはまた別物です。さらに、好みを言うなら、文庫ではなく、きちんとしたハードカバーで読みたいんですよね。
先日、資源外交で中東のアブダビに行く際に、現地の日本人学校に何を差し入れしようかと考え、日本語の本にしました。小さい子が大好きな働くクルマの絵本、私の地元、墨田区の「東京スカイツリーができるまで」というカラー写真の本、あとは自分の好みでもありますが、かつて涙を流しながら読んだ『ごんぎつね』と、『フランダースの犬』を小学生向けに。上級生向けには、幸田真音さんの『天佑なり』。これは最近読んで感心した本で、二・二六事件で倒れた高橋是清の人生を描いたもので。高橋是清は我が省が所管している特許庁の初代長官でもあります。それからもうひとつ、漫画で『ベルサイユのばら』を全巻、持っていきました。余談ですが今年、「ベルばら」は別冊マーガレットで新しいエピソードが掲載されたんですが、その時は恥ずかしかったですが何十年ぶりかで書店に「別マ」を買いに行きましたよ(笑)。
外国にいても、日本人である証として、日本語を読むのは大事なことだと思うんです。ですから今回のおみやげには、海外ではなかなか手に入れるのが難しい、日本語の本を贈ることにしたのです。やはり電子ではなく紙の本がいいと思いまして。
印刷や本の魅力は、文章の組み方や字体にもあります。知人の中には、二段組みの本は読まないという人もいたりする。私は、ほど良く白の部分があると美しくて読みやすい。でも、白地が多過ぎると「ああ、安直に本をつくっている」とバレバレですね(笑)。あとカバーとか、帯とか、どこまでこだわるかは別にして、本にはいろいろ感じるものがあります。
当然、自宅には本があふれています。独身の時から部屋は本の山でした。ところがこの間、仕事でインテリアショーに行った際、30代独身女性を想定した部屋のモデルには、本棚がありませんでした。確かに本を読まない人は、狭い部屋でも住めていいでしょうけれど、これは私には信じられない。最近は、固定電話もないし、新聞も取らないという人が増えているようで、少々心配です。
私は自分を歴史屋だと思っているので、読むのは浅田次郎さんとか、私の地元の日暮里出身の吉村昭さんが多いですね。浅田次郎さんの『終わらざる夏』は涙なしでは読めませんよ。是非読んでください。あと好きな本でいうと福田和也さんの『昭和天皇』シリーズ。私は特に近現代史が好きで、その類の本はかなり読みこなしたつもりでいたのですが、知らなかったことがたくさんあって、福田和也さんはすごい人だと思いましたね。