--印刷関連業界に、多くの接点をお持ちだと思いますが。
私は、某印刷会社で商業印刷物の営業を丸6年経験した後、弊社に入社しました。以来、一貫して印刷機械営業の道を歩んで30年余になります。
北は北海道から南は沖縄まで、国内営業の責任者として飛び回っていますが、製本会社さんも含めて印刷関連会社さんのトップとは、毎日のようにお会いしていますね。ほとんどの方がオーナー経営者です。近年の厳しい業界状況から、皆さん悩みを抱えていらっしゃいます。
弊社も、同じ業界ですから、かつてないシビアな状況に対して必死です。昨年('15年9月開催)のIGAS(国際総合印刷機材展)をご覧になった方も多いと思いますが。どう感じられたでしょうか。品揃えも規模も大きい弊社ブースに「元気をもらった」「背中をおされた」「勇気づけられた」とおっしゃる方も沢山おられました。しかし、あれは要するに"業態の変革をしないと企業が成り立たなくなる結果"としての展示会です。弊社は、主に枚葉・輪転機の製造・販売を生業としてきましたが、リーマンショック(`08年)後、先々もたなくなると結論づけ、新しい企業価値を生み出すべく、製品ラインアップ拡充などの企業対応に努めてきました。
「我々の業界はどうなるんだ」と皆さん将来に不安をお持ちであることは、直に接する機会も多いので、ずっと以前から肌で感じておりました。今までのオフセットの良さとデジタルの良さを両立させ、どう天秤にかけながら印刷という経営をやっていくのかがポイントだろうとは思います。日本の印刷マーケットは、'85~'90年代のバブル期のピーク('91年の印刷出荷高約9兆円)を経て、どんどん落ち込んできた構図もあります。しかし、激しい右肩下がりが続いた業界も、ここまで来てみて、ようやく「底打ちかなぁ」という感じもありますね。
大きくは"世の中の印刷を変えていかなければならない"ということだと思います。いま現場が困っているんです。そうした困り事を、しっかり捉えて対応することも大事でしょう。
印刷機械メーカーである弊社としても、同様に捉えて、できる限りのことを始めています。現場を改革する一つがH-UV(ハイブリットUVシステム)。'09 年に発表して以来、飛躍的に伸びている革新的なUV乾燥システムです。
H-UVは、インラインで瞬時に乾燥させ、従来の油性印刷に比べて印刷リードタイムを飛躍的に短縮化しました。また断裁・型抜き・折りなどの後加工もすぐに行えるので、納期短縮に大きな効果があり、さらにパウダーレスによる品質向上のメリットもあります。
発売してから'13年の3月までの国内の販売実績は約400台。つまり、約400 人のオペレータがいらっしゃいますが、皆さん「二度と油性の印刷機械に戻りたくない」と言っています。それまで手間とコストがかさむ「刷り直し」で苦労されてきたのが解消できるわけですから。
H-UVのインキは、油性インキよりコスト高なのですが、このマイナス要素も納期短縮や印刷トラブル減を考慮すればクリアされるでしょう。また、光沢性や発色性など印刷品質面においても進化してきています。
現在、弊社への引合い・問合せの60%がH-UV関連(油性が31%、厚紙パッケージが9%)です。そして、すでに国内販売の4色機以上の60~70%がH-UVでのご発注です。新規および入替えのお客様はほとんどがH-UVです。とくに1台目の評価が高くて、2~3台目を導入されるケースが全国で80社以上に達します。さらに、国内だけでなく米国や欧米でも積極的に啓蒙して、その良さが拡がっています。最近では、フランスの化粧品メーカーや日本の自動車メーカーなどの発注者側から「この印刷はH-UVで」という名指しのオーダーも増えています。
「製本までやさしく刷り本をもっていこう」ということで開発されたH-UVが、もっと拡がって、これからの印刷のグローバルスタンダードになればと思っています。
また、印刷の現場に革新性をもたらしたいという考えは、取扱アイテムの拡充方針にも繋がっています。(昨年のIGASでも反響大でしたが)断裁機をはじめ、打抜き機などへとアイテムを拡げています。さらに海外企業との業務提携なども行い、筋押しなどの微細な印刷物ができる加工機も取り揃えてきています。