自費出版分野で中堅印刷会社が増加傾向
減少する出版市場で新しい事業として注目を集める
日本グラフィックサービス工業会主催、日本自費出版ネットワーク主管の「第22回日本自費出版文化賞」最終選考会が9月4日、東急REIホテルで開催され、応募総数508点の中から、大賞1作品、部門賞7作品、特別賞7作品が選ばれた。
大賞を獲得したのは、岡村啓佐氏の「NO NUKES ビキニの海は忘れない」で、印刷は高知新聞総合印刷が手掛けたものだった。今回の自費出版文化賞には、個人誌、グラフィック部門に図書印刷、小説部門に錦明印刷、小説、詩歌部門に中央精版印刷の作品が応募されているなど、中堅印刷会社の参加が目立った。これまで中小印刷会社が取り組むことが多かったイメージの自費出版に、中堅企業が参入する背景には、出版印刷市場の減少があるといえるだろう。
全国出版協会・出版科学研究所の調査によると、2018年の紙の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売金額は前年比5.7%減の1兆2,921億円で14年連続のマイナス。書籍が2.3%減、雑誌が9.4%減少した。
書籍は児童書、ビジネス書が前年並みで、文芸、実用、文庫、新書など主要ジャンルがマイナスとなり、前年を下回ったという。
大手出版社からの仕事を中心に事業に取り組んでいた印刷会社は、従来の大ロットのジョブだけでなく、小ロットで付加価値の高い印刷物を手掛けるなど新しい事業、分野への展開に力を入れているようだ。
なお、日本自費出版文化賞の表彰式は10月13日、アルカディア市ヶ谷で開催される。例年、表彰式の受賞者スピーチでは、著作に込めた並々ならぬ想いが語られる。会場内は熱気に包まれ、思わず涙を流す人も少なくない。その独特の空気を作れる自費出版に魅力を感じ、参入する印刷会社もいるのではないだろうか。