インクジェット企業2社を買収
軟包装事業の足掛かりを強化
花王は今月、インクジェットインクを製造・販売する米国のコリンズ インクジェット社(オハイオ州)とスペインのチミグラフ ホールディング社の事業を相次いで買収した。
花王は今年3月、「顔料ナノ分散技術」を応用し、軟包装用フィルム基材に印刷できるVOCレス設計で世界初の水性インクジェット用顔料インクの開発に成功したと発表。大手化学メーカーによるインクジェット市場への参入は印刷業界でも驚きを持たれている。
ただ2007年に新しい分散技術と粒子の表面改質技術を開発し、カラーレーザープリンター用のトナーを開発しており、グラフィックアーツ分野への取り組みは初めてではない。現在、スペインの欧州花王化学研究所で研究、開発を続けている。花王のB to B向けの「ケミカル事業」は、売上高2,885億円。全売上の17%を占め、海外比率は70%になる。同事業のキーワードは「グリーンイノベーション」と「エコテクノジカルソリューション」。戦略としてはM&Aと設備投資をテコにシェアを伸ばしていくことになる。
コリンズ インクジェット社の従業員は約90名。米国を中心にインクジェット用インクを開発、製造、販売しており、多種多様なインクジェットヘッドに対応した高度なインク設計技術を持つ。チミグラフ ホールディング社は従業員180名。パッケージ印刷用フレキソインク、インクジェット用インクを開発、製造、販売。多彩な製品ラインナップと多様なインク設計技術により、欧州を中心にビジネスを展開。多品種印刷対応に優れるインクジェットに対応したインク開発に注力している。3月時点でインクジェットインクの売上目標は2020年までに100億円だったが、2社の売上規模が100億円のため目標達成は前倒しされ、新たな目標は2025年に300億円。